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「とりあえずバラ撒く」だけのクリエイター起用に終止符を。Instagramを活用したクリエイター共創が持つ、本当の価値とは?

「とりあえずバラ撒く」だけのクリエイター起用に終止符を。Instagramを活用したクリエイター共創が持つ、本当の価値とは?

人々の生活に根付いたSNSとして企業、個人共に活用が広がるInstagram。「大切な人や大好きなことと、あなたを近づける」と掲げたミッションの元、特に最近はクリエイターウィーク(Creator Week)と題したイベントを米国で開催したり、クリエイターの収益化システムを構築するなど、クリエイターが輝くためのプラットフォームとして進化を遂げています。

本メディアを運営するテテマーチ株式会社でもSNS時代のプロモーション企画集団「餅屋」を立ち上げ、Instagramを中心に、クリエイターを起用したコンテンツ企画に取り組んでいます。

そこで今回は「餅屋」の発起人でもあるテテマーチ株式会社・ふくままさひろが、Facebook Japan株式会社・中村淳一さんとともに「クリエイター共創」のこれからについて語ります。

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“バラマキ型”マーケティングは成果に繋がるのか?

(テテマーチ株式会社・ふくま まさひろ)

ふくままさひろ(以下、ふくま):前回、前々回の記事に引き続き第三弾ですね。よろしくお願いします!

中村淳一(以下、中村):はい、よろしくお願いします!

ふくま:御社では以前からクリエイターの活躍を目指した取り組みをされていますよね。どういった背景でクリエイターに着目した取り組みが始まったのでしょうか。

中村:Instagramがミッションに掲げている「大切な人や大好きなことと、あなたを近づける」がクリエイターへの支援に注力する動きの背景にあります。特に近年、Instagramを通してお気に入りのクリエイターと繋がりたいというニーズが利用者の中で高まっていると見ており、それを実現するために、クリエイターにとって魅力的なプラットフォーム、つまり多様な方法で自己表現が可能で、かつInstagram上で生計を立てられるような仕組みを作っていこうとしてます。

たとえば先日、CEOのマーク・ザッカーバーグからも発表がありましたが、2022年末までに10億USドルの予算を投下し、クリエイターの収益化に向けて本格的に動き出す予定です。現在すでに実装されているようなショップ機能やバッジ機能、Facebookのスタープログラムなどに加え、新たな収益機能の追加も検討しています。

クリエイター、企業などInstagramを積極的に活用してくれている人たちには、伝えたいメッセージや発信した想いなどがあると考えています。それらを後押しできるプラットフォームとして、Instagramは高いポテンシャルを秘めていると思うんです。

ふくま:実際のユーザー数の増加を考えても、Instagramへの期待値は今もなお上昇中なのではと思います。将来的に決済システムなどを導入することで、より一層Instagram上での購買体験も増え、一層楽しめる世界が作れそうですよね。

僕たちも、Instagramを始め、SNSを中心としたプロモーション企画集団の「餅屋」を立ち上げていることもあり、企業やクリエイターと共にInstagramを効果的に活用する方法を模索しているんです。

クリエイターというと写真・映像・デザインなどのように「何かを創作している人」のイメージがあるかもしれませんが、僕たちが考えるクリエイターはそればかりではありません。自己プロデュースを行ってSNS上で創意工夫して発信し、その結果、独自の世界観を確立して多くのフォロワーに支持されている人も「クリエイター」と言えるのではないかと。

そんなクリエイターとの共創の観点でいくと、企業によるSNSを活用したインフルエンサーマーケティングが代表例として挙げられますが、このあたりは今後改善されるべきマーケティング手法だなと思っていることが多くて……。

(Facebook Japan株式会社・中村淳一さん)

中村:テテマーチさんが関わっていらっしゃる中では、Instagramを活用した企業とクリエイターとの共創は、どんな事例が多いのでしょう。

ふくま:従来のスタイルで多かったのは、いわゆる“バラマキ型”と呼ばれるインフルエンサーマーケティングです。企業がPRしたい商品を無償で提供し、その感想や使い心地などを投稿してもらうことで成果報酬や固定報酬が発生するというもの。

2016年頃から定番化した手法で、先駆けて始めたのが美容メーカーや時計ブランドでした。それが一般化して企業が取り入れ、今もなおインフルエンサーマーケティングの定番手法として行われています。

中村:複数のクリエイターに同時にPRの依頼を送ることから“バラマキ型”と呼ばれるようになった手法ですね。当時はある程度認知度のあるブランドからのオファーとして引き受けるクリエイターが多かったですし、その流れが加速するにつれて「ブランドからのPR依頼」という存在がクリエイターにとっても権威性を示すものになっていたのかなと思います。

ふくま:そうですね。PR依頼を受ける存在になったことそのものが価値だったので、当時を振り返ると一つの手法として有効的だったはずです。ただ、今はユーザーのリテラシーも上がってきているので、そのPR投稿が意味を成さないケースも増えていると思うんです。みんなが同じ商品をPRしていたら、その投稿が本心によるものなのか、お金をいただいているからやむを得ず書いているものなのか判別が付かず、誰の心にも残らないなと。

せっかく企業も広告予算を活用してインフルエンサーマーケティングに着手しているのに伝えたいメッセージが伝わらないわけですし、投稿を行うクリエイターもフォロワーからの信頼を失ってしまいかねない。誰にとっても良い結果が得られない悪循環を生み出してしまうので、ユーザーにしっかり届くインフルエンサーマーケティングを考えていかねばと思っているんです。

立体的なコミュニケーションで新しい価値提供を

(Facebook Japan株式会社・中村淳一さん)

中村:以前、我々もクリエイターの方にインタビュー調査を行なって、そういったインフルエンサーマーケティングの在り方について議論したことがあるんです。そのときにある方が仰っていたのが「誰かに影響を与えるだけの熱量がクリエイター自身にないと何も伝わらない」と。

バラマキ型のインフルエンサーマーケティングの落とし穴は、クリエイターが熱量を持って紹介してくれるようなコミュニケーションを取れないこと。不特定多数のフォロワー数の多いクリエイターに同じ依頼を送るだけの手法なので、熱量を伝えるには不十分なんですよね。そのことにまだ気づけていない企業もいるのではないかと思うんです。

ふくま:本来であれば、一人の人間としてクリエイターと向き合い、話をして、企業が同じだけの熱量をクリエイターに伝えないといけないはず。もしも対面での打ち合わせで依頼をするとしたらもっと目の前の相手のことを知るだろうし敬意も表するはずなのに、SNSだからといってそのフローが抜け落ちてしまうのはもったいないなと感じています。

中村:Instagramは企業にとってもクリエイターにとっても、そしてもちろん利用者にとっても最適なプラットフォームでありたいと思っているので、そのあたりの風通しはもっと良くしていきたいんですよね。現在のインフルエンサーマーケティングの在り方を変えていくにはどういった取り組みをしていくのが良いんでしょうね。

ふくま:まずは啓蒙からかなと思っています。今のインフルエンサーマーケティングが必ずしも企業、クリエイターの双方に取ってポジティブな施策ではないことを伝えたいというか。僕たちのような企業から、実際の事例や考え方などを積極的に発信していくことで、認識をアップデートしていくことが必要なのではないかと思います。そうでないと、このままインフルエンサーマーケティング自体がシュリンクしてしまいそうで危惧しているんですよね。

中村:ふくまさんってテテマーチさんのCCO(チーフ・コミュニケーション・オフィサー)でしたよね。ふくまさんのように企業の中でクリエイターとのコミュニケーションについて考えられる人がもう少し増えると良いなと思っています。

最近、とあるブランドさんとキャンペーンでご一緒したんですが、クリエイティブに特化した弊社チームも企画から参加させていただき、DJをクリエイターとして起用してパフォーマンスをライブ配信したり、ブランドコンテンツを彼らのアカウントから広告配信したりと、オーガニックと広告の双方でクリエイターを絡めて立体的なコラボレーションを実施したんですね。

こういった取り組みは企業の中からだけではなかなか生まれない。多様なクリエイターと共に共創することで新しい企業の見せ方にも繋がるのではないかと思います。そういったブランドコミュニケーション全体を考えられるのがふくまさんのような方だと思うので、多角的に楽しめるコンテンツの企画がInstagram上に増えてくることを期待しています。

リッチ化するコンテンツと共にクリエイター活躍の場も拡充したい

(テテマーチ株式会社・ふくま まさひろ)

ふくま:これからの未来、さまざまな観点でクリエイターとの共創に取り組む企業が増えていくと嬉しいなと思っているんですが、クリエイターの引き出しやアイデアを最大限活かすために持つべき視点ってあるのでしょうか。

クリエイターにはそれぞれの持ち味や個性があるわけなので、それらを活かした企画を作っていくべきですが、なかなか実現するのも難しいと考える人が多そうだなと。

中村:基本的には「〇〇を言ってください」ではなく「〇〇だけは言わないでください」のように最低限のルールだけ決めて、制約を付けすぎないことを意識すると良いのではないかと思います。クリエイターの表現の自由度とフレキシブルさは残した上で企画していかないと共創の意味がなくなってしまうので。

また、インフルエンサーマーケティングは、今やリーチのための手法ではなく、ミッドファネルに位置する課題感を解決するための手法。たとえば、ブランド認知はあるもののエンゲージメントが低かったり、ブランドメッセージがしっかり生活者に届いていなかったりといった課題解決に繋がる手法だと思っています。

ですから、どういった課題にアプローチするための企画なのか。共創によってどういった熱量やモチベーションを生み出していきたいのかなど、課題感も含めてクリエイターと話していくことで、よりコアに関わってもらいながら良いコンテンツを生み出していけるのではないかと感じますね。

ふくま:クリエイターの活躍の土壌もまだまだ作れていないので、そういった環境構築は「餅屋」としても精力的に取り組みたい課題です。クリエイター自身が心置きなく自身のクリエイティビティを発揮できる環境であったり、クリエイター同士の繋がりを増やしてアイデアをより広げる環境など、“新しいクリエイティビティの場作り”がこれからの未来では必要だと感じています。

中村:そうですね。我々はこれからInstagramを通して新しいソーシャルの世界観を作りたいと思っています。クリエイター支援、コマース分野への注力はこれまでの記事でもお話したとおりですが、さらに5Gの到来によってリッチコンテンツを楽しめる環境を構築したいなと。特に弊社ではVRヘッドセットの「Oculus Quest」を開発しているので、今後はVRやARなども踏まえた新たなコンテンツの楽しみ方をお届けできると踏んでいます。

ふくま:新たなリッチコンテンツが登場することでクリエイターの活躍も多岐に渡りますし、ユーザー体験もより芳醇なものになっていく気がしますね。これからがますます楽しみです。今日は長時間に渡ってお話いただき、本当にありがとうございました!


中村:こちらこそありがとうございました!

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