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寄り添い、向き合い、対話を続ける。顧客一人ひとりと作り出す #ブランド体験のイマ

寄り添い、向き合い、対話を続ける。顧客一人ひとりと作り出す #ブランド体験のイマ

Date : 2021/11/16

「ブランド」という言葉や価値の在り方はここ数年で随分と多様化しています。企業がマス向けに立ち上げるものばかりではなく、個人が立ち上げたり、ニッチな需要に答えることを目的としていたり、ブランドの存在意義は一つの言葉で語りきることができません。

ただし、ブランドを存在させていく上で必要な視点に共通点もあるのではないだろうか。今回開催した対談イベント「顧客と作るブランド体験の『イマ』」はそんな思いから生まれたものです。

今回は、顧客とのコミュニケーションに重きを置いて豊かなブランド体験を生み出す方々を四名お呼びしました。ブランドが提供する価値、必要なコミュニケーションなどを中心に、みなさんとお話したイベントの様子をレポートとしてお届けします。

セッション01 顧客との1to1コミュニケーション

今回のイベントでは、二名ずつ登壇いただきセッションを分けて開催。第一セッションでは、株式会社ソトレシピ CEOの千秋さん、株式会社koujiouji CEOのオミさんをお招きし「顧客との1to1コミュニケーション」をテーマにお話いただきました。

キャンプ料理と甘酒、それぞれ「食」を起点としたD2Cブランドを立ち上げたお二方。今となってはSNSやマスメディアでも取り上げられるなど認知拡大に成功している両ブランドですが、ブランドを立ち上げた際に共通していたのは”わかりやすさ”を捨てないことでした。

ご登壇者様

■千秋広太郎 氏(株式会社ソトレシピ CEO)

千葉県出身。明治大学政治経済学部卒業。編集者、PRコンサルタント等を経て2016年8月に株式会社シーザスターズを創業。趣味のキャンプと料理の経験を生かして2017年11月にキャンプ料理レシピサイト「ソトレシピ」を立ち上げ、Instagramを中心に総SNSフォロワーは20万人を突破。2020年2月に法人化し、株式会社ソトレシピの代表も務める。キャンプ道具D2Cブランド「ソトレシピプロダクツ」をSNSを中心に展開。2021年7月Makuakeにて初のクラファンに挑戦し、応援購入額約1700%を達成。その他YouTube、出版、セミナー講演などで活動中。

■ オミ 氏(株式会社koujiouji CEO)

楽天(株)を退社し発酵業界で起業、日本で1番高い生の甘酒ジェラートを開発、現在は製造販売からブランディング全て一人で手掛けている。2021年2月clubhouseで15分で200万円を売り上げる。正直な物作りがコンセプト。オンラインサロン[Honest Marketing 代表]Ankerアンバサダー/Voicyパーソナリティ

複雑さには頼らない。シンプルなわかりやすさがキーになる

千秋 「ブランドを立ち上げる際に考えていたことは3つ。特化すること、楽しさがあること、わかりやすいことです。キャンプ料理というまだ見ない分野に特化して、ワクワクするレシピを届ける。そして、ソトレシピと名付けることで覚えやすさを意識したんです」

2017年の「ソトレシピ」立ち上げ当時、30〜40代の社会人を中心にキャンプが小さなブームとなっていました。千秋さんはその流れを汲み取る形で、自身の興味関心を元にキャンプ料理を紹介するメディアを立ち上げ。キャッチーなネーミングとニッチな情報発信が功を奏して一躍話題に。 

一方、オミさんが作り出した甘酒スイーツ「amakouji」も、テレビや雑誌で取り上げられるなど多くの消費者に愛されるブランドです。日本人であれば誰もが知る甘酒に付加価値を提供することで、強い興味関心を生み出す商品化に成功しました。

ソトレシピ

オミ 「僕の場合は”何も足さない、何も引く必要もない完全無添加のプロダクト”と銘打って、至高の甘酒ブランドを作ることを目指しました。というのも、僕自身は発酵食品があまり好きではないんですね。もともと身体が弱かったために”腸活”と出会って甘酒に興味を持ったのが起業のきっかけなんです。そんな僕がおいしいと思える甘酒を作ることができれば、おそらく世の中の多くの人に愛してもらえるだろうと考えました」

千秋さんは、自身の好きな「キャンプ」から、オミさんは自身の苦手な「甘酒」から着想を得て。きっかけは異なるものの、シンプルな思考の末に生まれたブランドゆえに、そのストーリーに惹かれて多くのファンの獲得に成功しているのです。 

食べる美容酵素ジェラート「amakouji」

小さな事業規模の強みを活かした1on1コミュニケーションとは?

また、お二方のブランドの育て方に共通するもう一つの点があります。それは「顧客との濃い接点を持つための1on1コミュニケーション」。SNSでの発信によって認知を獲得しているブランドであるものの、顧客とのコミュニケーションではSNSに頼りすぎないことも重視しているようです。

オミ 「僕の情報発信は、主にInstagramとLINE@で行っています。LINE@での情報発信によって一人ひとりの顧客へアプローチしていくこともありますが、実は購入してくださった方にお電話をかけてお話することも珍しくないんです。一人で立ち上げたブランドだからこそ、作り手として顧客の声を聞きたいと思う気持ちがあり……率直なご意見を直接伺えるので、商品作りに大変活きています」

千秋 「『ソトレシピ』はメディアからスタートしたD2Cブランドなので、基本的にはSNS、特にInstagramで情報発信を行っています。現在は約19万人の方がフォローしてくださっているので、情報発信だけではなく、アンケート機能を活用した巻き込み型のコミュニケーション、DMを活用したヒアリングなども広く実施していますね。

加えて、昨年の初頭くらいまではキャンプ場でのキッチンカーイベントやワークショップイベントなども行っており、WEBやSNSでレシピを発信するだけでなく、実際に食べていただいてお客様の生の声を聞く機会としても活用していました(※ 2021年現在はオンラインインタビューに切り替え)。DMでのコミュニケーションよりも、やはり直接会ったり話すことで感じられる熱量ってあるんですよね」

SNSの活用が注目される今だからこそ、不特定多数ではなくあえて一人ひとりとコミュニケーションを取る大切さに着目する。その視点は、千秋さん、オミさんのお二方が揃って意識されているものでした。小回りのきく企業だからこそ、オーナー自身が足を動かしている点も印象的です。

また、両ブランドの共通点として、マスメディアでの露出をきっかけに認知度を高めた点があります。露出を増やすためにブランド立ち上げ時からお二人が考えていた戦略を教えていただきました。

オミ「最初からテレビで紹介したくなるような商品設計を考えていました。SNSも良いですが、影響力のあるマスメディアで取り上げられることが小さなブランドの成長戦略としては大切だと考えたからです。

日本一高い甘酒というキャッチーさ、見た目の高級感、ネーミングなどでインパクトを残せるようにとプロダクトを開発していたんです。実際、開発から約1年間でローカルの情報番組に取り上げていただき、それがきっかけでバズが起こり売れ行きがグッと良くなりました。費用対効果としては、約3,000万円ほどかかるところを無料でプロモーションできたので、とても高い効果があったと感じています」

千秋「僕の場合は、世の中にキャンプブームが到来しつつあるタイミングの起業だったので、世の中の露出機会を増やそうと考えてプレスリリースを数多く掲載しました。自分自身がPR会社の出身なので、その知見を活かした取り組みです。

初期はすごく地道な戦法でしたが、世の中に爪痕を残し続けることが小さなブランドは何よりも大切ですからね。結果として、じわじわと露出機会が増え、今となっては本やYouTubeなどを経由して出演や素材提供などの問い合わせをいただいています」 

一つひとつの種を仕掛け、育った芽をしっかりとブランドの成長に活かす姿がとても印象的なお二方。これらの丁寧なコミュニケーションを通して、双方のブランドは一体どのような価値を生み出したいと考えているのでしょうか。お二方が目指す「ブランド体験」を改めてまとめて、第一セッションは締めくくられます。

千秋「暮らしに必要な衣・食・住の観点の中で、唯一、身体の中でも体験するのが”食”分野です。周囲の状況や会話、食材を口に運んだときの香りや口当たり、そして体内……長いシーンに渡って続く貴重な機会だからこそ、その食体験をより喜ばしいものにと考えています。

そのために、直近はInstagramのフォロワー数、プロダクトの売上などを観測しながら成長を続けたいですね。とはいえ、指標にとらわれすぎず柔軟にその都度目標を立てながら事業を推進していきたいと思っています」

オミ「僕は”食育”を一つのキーワードだと考えています。僕自身、虚弱体質だったことを理由に甘酒へ注目してブランドを立ち上げた背景がありますが、ブランド作りを通して、知識だけでは体質は変わらないのだなと強く実感したんです。

やっぱり、五感を通した体験が必要不可欠。ですから、多くの方に自然由来の食材の良さや自分に合った食材を選ぶことの重要性を伝えたいですし、ゆくゆくは食のリテラシーが日本全体で高まったら嬉しいなと思っています。

本当に良いものを作って突き抜けたプロダクトを作ることで、消費者の方にとっての悩んだり選択するストレスから開放できるのではと考えています。そういった、突き抜けたプロダクトを目指してこれからも頑張っていきたいですね」

おふたりとも貴重なお話、ありがとうございました。

セッション02 時流に合わせた顧客品質とコンセント追求

第二セッションでは株式会社and CEOの平さん、株式会社PATRA 取締役の鈴木さんをお招きしました。お二方の携わるD2Cブランドでは、双方共に”暮らし”に着眼点を置いて情報発信やECでのオリジナル製品販売などを行っています。

そんなお二方にお話いただいたのは「時流に合わせた顧客品質とコンセプトの追求」。SNSというタッチポイントからスタートして、コマース分野へと事業を展開する両ブランドに、支持されるブランド作りの秘訣を伺いました。

ご登壇者様

■ 平貴衣 氏(株式会社and CEO)

2018年に現在の会社を創業。ゼロからライフスタイルを主軸としたメディアブランドを立ち上げ今年100万フォロワーを達成。現在はLittle Roomsをというライフスタイルブランドの運営を行っている。

Little Rooms

■ 鈴木真彩 氏(株式会社PATRA 取締役)

1993年生まれ。在学中にスタートアップにて旅行系メディアの新規立ち上げを行い、株式会社DeNAでのインターンを経て卒業後に株式会社PATRA 取締役に就任。ECプラットフォーム「PATRA market」や、サービス内で展開するブランドの立ち上げ/運営、インフルエンサーのブランド立ち上げを仕入れ,生産から発売まで一貫してサポートする「OWNERS」などの事業を展開。2019年には韓国法人PATRA KOREAを設立。

PATRA MARKET  

OWNERS by PATRA

遠すぎず、近すぎない。絶妙な距離感で時代の流れをキャッチするコツ

「メディアを始めた三年前、韓国で流行していた”小さな暮らしに潜むしあわせ”に着目して事業を作りました。当時の日本では、住まいというと持ち家やリノベーションなどの情報が多く、賃貸物件や実家の一部屋で生まれる暮らしにスポットライトが当たる機会が少なかったんです。そこで“小さな幸せ、愛おしい暮らし”をコンセプトに、ビジュアル重視のSNSであるInstagramで情報発信をスタートしました」

鈴木 「私たちはSNSが生活の中心にある人々に向けて、SNSで注目されるD2Cブランドを作ろうと思い、事業をスタートさせました。小さな企業だからこそアプローチできる、機能性ばかりに重きを置かないアイテムの開発に着手し、OEMでの生産を行っています」

SNSネイティブな若者に向けて、豊かな暮らしのヒントを届けている点が一致している両ブランド。加えて、ニーズやトレンドをキャッチアップする感度も随一です。移り変わりの早い時代の潮流を追いかけつつも、先取りしすぎず常に顧客と並走する距離感の作り方、一体どのような意識のもとで考えられているのでしょうか。

鈴木 「いろいろなSNSにチャレンジするのではなく、Instagramのみに絞ることで顧客接点を作り続けているんです。フィード投稿での情報発信はもちろん、ストーリーズでのコミュニケーション、リール、IGTV(Instagram動画)、DM……など使える機能はフル活用しています。特に、DMはブランドのイメージを左右する大切なコミュニケーションツールなので、そこでの接客方法は常にチームでアップデートしています。

特に活用しているのはストーリーズのアンケート機能。はい / いいえで答えられるようなライトな質問をほぼ毎日のように更新してコミュニケーションを取っています。また、各ブランドでのインスタライブも週1〜2回程度は行っていますね。中の人の素性がわかることはブランドの信頼を高める上でなによりも大切なので、顔が見えるコミュニケーションを意識的に増やしています」

「私たちはInstagramからスタートしたものの、今はTikTokやYouTubeなどチャネルを広げて顧客接点を生み出しています。チャネルのフェーズやコンテンツの動向などを見つめる中で得られるニーズを元に、メディアグロースやプロダクト開発のアイデアを検討しているようなイメージです。

Instagramでは1対1のコミュニケーションが取れる機能が多いので、私たちもアンケートやDMなどを積極的に活用していますね。対ブランドとしての対応ではなく、友人同士での距離感を意識したコミュニケーションを取ることで身近な存在として感じてもらいたいんです。それを叶えるために、チームでは『週に◯回はアンケート機能でコミュニケーションを取ろう』のように施策の実施回数目標を共有して取り組んでいます」 

互いに関わり合うことで育む、豊かな「ブランド体験」を

SNSを駆使することで、より顧客とブランドとの距離を近づけることができ、まるでブランドが「一人の親友」のような存在になることも。それは、ファンづくりという言葉には収めきれない強い信頼関係のように感じられます。

鈴木 「プロダクトの開発段階のときから、インスタライブを開催して、悩んでいることや考えていることをリアルタイムでフォロワーさん(顧客)に伝えるようにしているんです。そうすると、いろいろな意見が聞けるので学びになるのはもちろん、フォロワーさんにとっては自分たちの意見が反映されたプロダクトが生まれることになる。それって、お互いにとって楽しい関わり合い方なのだと思っています。

あとは、ブランドを育てていると、やっぱり何かしらのミスが発生することを避けられない場面があります。仕入れ、販売、生産、配送など、どこかのフローで顧客に迷惑をかけてしまうような。そういったときに、とにかく真摯に対応することを徹底しています。

メンバー全員にそのミスを共有して一人ひとりと最高の対応を考えて、顧客と対峙する。ミスが起きないようにとは常日頃から思っていますが、起きたミスから目を背けないことも信頼していただくために大切なのだと考えています」

「私たちも似た考え方です。ブランドと顧客の距離感に正解はないと思いますが、顧客の小さな幸せの総和を事業の価値としているので、その幸せを知れるだけの距離感でコミュニケーションを取り続けたい。そのためには、伝えたいことをただ発信するだけではなく、耳を傾けて対話するような関係を築くことが重要です。

ただ、チームの規模が大きくなってくるとその関係を築くことすら難しいなと感じるシーンもあります。ブランドの人格を保ちにくくなるというか。そういった問題がこれまでに発生したときには、まずブランドでブラさない軸を作りました。具体的には、ブランドとして”やらないこと”や”言わないこと”を決めたんです。

複数の人々が関わり合って一つのブランドを育てているので、NGだけを決めることでスピードを落とすことなくブランドらしさをチームでシェアできるようになりました。そのおかげで、チームが拡大しても顧客一人ひとりとの信頼関係を維持できているのかなと」

お二方の話から見えてきたのは、一方通行の情報発信ではなく、顧客と相互に関わり合いながらブランドの価値を作る重要性でした。それでは最後に、第一セッションと同様、お二方が目指す「ブランド体験」をまとめて本レポートも締めくくりとします。

「コンセプトである“小さな幸せ、愛おしい暮らし”を感じてもらうことに尽きます。コンテンツにせよ、プロダクトにせよ、価格・デザイン・機能・ストーリーなどの軸をしっかりと持つことが小さな幸せの創出につながると考えているので、その軸を変えることなく貫いていきたいなと。そうして、多くの方の暮らしがアップデートできる世の中を目指しています。

現在の指標はチャネルごとに、売上やエンゲージメント率、UGC、フォロワー数など数多くありますが、根幹であるコンセプトが一番大切。芯の通った商品をこれからも提供することで、小さな幸せの総和を拡大していきたいです」

鈴木 「まずは、現在リピーターさんに支えていただいているブランドが多いので、熱狂的に愛してくれる顧客のみなさんと共にこれからも歩んでいきたいです。

また、私たちは数多くのブランドを立ち上げていますが、全ブランドに共通して、日々の生活に寄り添う購買体験をなによりの価値だと捉えています。顧客一人ひとりの生活のそばにあり、好きだと思ってもらえるプロダクトを生み出すこと。そしてなにより、多くの方に愛していただけるブランドであり続けられたら嬉しいですね」

おふたりとも貴重なお話、ありがとうございました。

https://tetemarche.co.jp/brand_produce/

テテマーチの「ブランドプロデュース事業」は、SNSマーケティング支援で培ってきた“コミュニケーションデザイン”を武器に、ブランドと生活者を繋ぐ、新しい価値(好き)を創造する事業です。

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