
個人の声に耳を傾け効果的な活用を。SNSマーケティングの変遷とこれから
テテマーチ株式会社が2021年に起きたソーシャルメディア市場の変化と進化を伝え、戦略と適応力が光ったプロモーション事例をご紹介するイベント「2021年のSNSを振り返る」。本記事はイベントにて話題にあがったテーマをまとめたイベントレポートです。
1年間振り返って見えた動向から、2022年のソーシャルメディア市場のトレンドや、注目しておきたいポイントを予測します。今回のテーマは、Instagram・Twitter・TikTokの2021年における変化と進化。プラットフォームのコマース化、ショート・ライトコンテンツへの参入、クリエイターへの還元に向けた動きなど、目まぐるしいアップデートが多数ありました。
これらはユーザー行動や市場・経済にどういった影響を与えるか、SNSプロモーショントレンドとマーケティング市場に詳しい3人が、事例・ユーザー・プラットフォームの目線から語ります。
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【登壇者】
2021年、注目したいSNSのアップデートは?
ふくま:このセッションでは、Instagram、Twitter、TikTokの2021年における変化と進化を振り返って参ります。プラットフォームのコマース化、ショート・ライトコンテンツの参入、クリエイターへの還元など、めまぐるしいアップデートが多数ありました。
これらがユーザー行動や市場経済などにどういった影響を与えるか、今回は弊社メンバー3人で、事例・ユーザープラットフォームの目線からお伝えいたします。今回はTwitter・Instagram・TikTokの3つのメディアを取り扱っていこうと思います。
2021年、Instagramの注目したいアップデート
まずInstagramに関して。もちろんここにある以外にも、マイナーアップデートはたくさんあるんですけれども、これを見ただけでも「そんなにアップされてるんだ!?」っていうぐらい、本当にこの1年間で目まぐるしいアップデートが起きています。この中で、特に印象深かったアップデートみたいなものを二人にお伺いしたいです。
松重:僕としては印象的だったアップデートが2つ。
まず、一番最近だとストーリーズから外部サイトに誘導できるリンクスタンプ機能です。もともと1万フォロワーを達成しているか、公式バッジがついていなきゃ使えない機能でした。だからみんな1万フォロワーを目指してアカウントを運用していたのですが、それがリンクスタンプっていう形で、何の条件もなく使えるようになりまし。
これによって、1万フォロワー目指す理由がなくなったなと思うんですね。今までの必須指標だったフォロワー数を追わなくて良くなったのはすごく面白いなと思っています。
引用:about.Instagram.com リンクのシェアが誰にでも可能に
2つ目は、検索機能が今年めちゃくちゃ強化されたこと。地図検索とキーワード検索は、Instagramの方から正式にリリースしたというお達しはないんですけど、日本国内のアカウントでもかなりできるようになってきいますよね。
ふくま:たとえばグルメ関連のキーワードで検索すると、その検索キーワード自体がハッシュタグに入っていなくても、その検索キーワードが入っている投稿を検索して見られるようになりましたよね。
松重:ちなみに文字が入ってなくても、位置情報でも情報が拾えるんです。「カフェ 目黒」で検索して探したときに、キャプションの中にカフェも目黒も入ってなかったんですけど、投稿のその場所が目黒にあるカフェとして登録されていて検索にヒットしたので。本当に便利だなと思います。
ふくま:リンクステッカーもすごく印象的でしたね。実は僕の周りに知らない人が結構いたんです。「え? 今リンク貼れるの?」みたいな感じで。
三島:僕もリンクステッカーが大きいアップデートだったと思っています。今までは、リンク遷移を目指すべく、一旦「1万人を目指そう!」みたいな運用時のKPI設計がありました。それがこのアップデートのおかげでなくなって、本当にファンになりうるユーザーさんを抱えていこうという意識に変わりました。
あとは、クリエイターの収益化ですね。プラットフォームとしても、クリエイターを支援していくぞという意思の表れが強く出ていたと思います。インフルエンサーやクリエイターが、今後SNS上で他の媒体にも繋がってくると思うのですが、今まではクライアントさんから対価をもらうPR活動を中心にマネタイズしていたと思うんですね。
ですが今は、クリエイター側も自分のコンテンツにちゃんとファンを作れれば、自分たちの表現の対価として報酬を得られる。それはすごく大きな変化になりそうだなと思いましたね。
引用:about.Instagram.com クリエイターの生計を支援する新たな方法
ふくま:収益化のためのバッジ機能やライブ配信中に投げ銭がもらえる仕組みなどですね。ただ、アフィリエイト広告は、日本ではまだ実装されていなくて、全然入ってこないですが。チェックアウトがないと使えない機能がまだまだたくさんあるんですよね。アフィリエイトプログラムは、海外では始まっているけれど、日本にはまだチェックアウトがないので使えないですし。
Instagramで商品紹介をして、そこから購入されたらお金入ってくるっていう形も今後はあり得るということですよね。
2021年、Twitterの注目したいアップデート
ふくま:次はTwitterを振り返っていきましょう。Twitterも結構変化がありますね。並べてみると印象深いというか。これは特に面白いな、という機能はありますか?
三島:さっきも話題に出ていたチップ機能は、クリエイターマネタイズ文脈で同じ動きを見せてるなと思います。あと、もう一つ僕が楽しみにしているのはコミュニティ機能です。
引用:blog.twitter.com 「チップ機能」を全ての方に
2021年9月のコミュニティ機能の追加の部分で、「ユーザー同士が自分の興味あるトピックに集まってその中で議論をしていく」というものなのですが、ちょっと新しいなと。今までのTwitterって結構オープンだったと思うのですが、そこにクローズ寄りの機能が付くとどうなるんだろうと、すごく楽しみにしています。
松重:たしかこのコミュニティ機能って、Twitterで情報を検索したときにいろんな人がつぶやいているせいで「この人の情報が信用できるかどうかってのがわからないから、信用できる人たちだけでちゃんと情報交換できるようなコミュニティを作っていこう」という背景で機能追加されたと記事で読みました。
三島:Twitterって共通の趣味で繋がっている人が多いじゃないですか。それを活かして情報の取捨選択できるのはすごく大きいですよね。使っている側からしてもめっちゃ面白い機能だし。
ふくま:僕もいくつかチャンネルに入っているのですが、この前、日本最大級のDiscordのグループが乗っ取られたみたいなんです。「Twitter通」というDiscordのチャンネルがハッキングされて潰れちゃったらしく。
Twitter・InstagramなどのSNSでオープンな環境ができていくほど、やっぱりメンタルヘルスへの悪影響があるので、クローズのコミュニティに戻るみたいな動きはおそらくあるんですよね。
今はもちろんTwitter・Instagram・TikTokあたりが主要で見られているのですが、今後もしかしたらDiscordやSlackなど、よりクローズドな媒体がSNSとして活用されていきそうだなと個人的には思っています。
松重:そもそもTwitterのアップデート、「2020年はこんなにあったっけ?」って思いました。2021年はすごい量ですよね。どんどんTwitterのスピードが上がってきていて、別物になってきたなと思っています。
僕が気になったのはスペースかな。結構どのSNSもTikTok化を進めてると思うんですね。Instagramのリールを始めとして、PinterestやSnapchatも寄せてるみたいなのですが、Twitterは独自路線で、いわゆるClubhouse的な音声部分を攻めてるなっていうのが面白いなと思います。
このスペースもチケット制による有料化や、クリエイターがマネタイズできるような仕組みを入れてきていて。競合もまだ音声だけの機能は入ってきてないから、Twitterはここがチャンスなんじゃないかなって思いました。
ふくま:日本だとClubhouseはすごく流行りましたけどね。1〜2月でしたっけ? 瞬間風速がすごかったですよね。あと、フリートは一瞬でなくなってしまいましたが面白かったですね。
フリート機能は、InstagramのストーリーズのようなものをTwitterでもやっていた形でしたが、あまり流行らなかったなという印象があります。フリート機能は使ってみてどうでしたか?
松重:テストで1回だけやってみて、「ストーリーズだな」と思って終えました(笑)。
三島:滑らかさがなかった印象があります。Instagramのストーリーズでやはり強いなと思ったのは機能の豊富さ。豊富だからこそ、やれることが多すぎて使わなくなってしまう、ということもあると思うんですけど、やはりいろいろと試したら面白かったなとは思います。
ふくま:すぐに検証・提供をして、クローズするというタイミングや引き際の判断はすごく良かったなと思っています。SNSの特性として、フロー型とストック型があるのですが、たぶんInstagramはストック型で、Twitterはフロー型。フリートやストーリーズは、フロー型の機能だから、Twitterの性質とカニバってしまって使われなかったのかなと思いました。
松重:あとはTwitterのショッピング機能みたいなのが、地味に復活していましたね。2014年ぐらいに一度やろうとしてその時はハマらなかったけれど、今またやろうとしているのかなと踏んでいます。
引用:business.twitter.com ProアカウントとTwitterショッピング機能
2021年、TikTokの注目したいアップデート
ふくま:TikTokは2021年を振り返ってみてどうでしょうか?TikTokにもクリエイターを直接支援できる機能がありますね。それから、TikTokは配慮を促すための新たなコメントツール提供を開始していますね。これはどうでしょうか。
松重:コメントに制限がかけられる機能ですね。TikTokは良くも悪くもコメント欄が荒れることがあって。各SNSで今年は「炎上させない仕組み作り」に取り組んでいた印象があります。
それからコンテンツ。TikTokは機能よりもコンテンツの中身がどんどん増えますよね。昔は本当に高校生や若い子たちが面白いコンテンツをたくさん上げているっていう印象だったけれど、最近はタレントさんとかもTikTokをガンガンやっている。
あと、レシピコンテンツを掲載できるようになったりもしていて、ただ面白い動画を観るプラットフォームではなくて、Howto系のコンテンツにすごく力入れてるなって印象がありますね。
三島:アルゴリズムの影響で、人によって出てくるコンテンツが細分化されますよね。
僕は生活やライフスタイル系が多いですね。収納術とか。僕、無印良品が好きなので、無印のおすすめアイテムとか、今年買ってよかったものとか。あとガジェット系も出てきます。
人と人とが繋がるSNS。発信の主人公は企業から個人へ
ふくま:ここまで、全体の大きいところを話してきました。各プラットフォームごとにさまざまな話題があるのですが、その中でも3つの傾向をお伝えします。
一つ目はクリエイターの支援ができるような制度が増えているというところです。チップ制度などがいろんなプラットフォームに出てきたと思うのですが、プラットフォームを活性化させるために、一般ユーザーの影響力の強化に着手している印象です。
二つ目がSNSのコマース化です。クレジットカード対応など一部まだ実装されていない機能もありますが、企業としてもコマースに取り組んでいる側面があると思います。Instagramのリンクスタンプももしかしたらここに通ずるものがありそうですね。
三つ目は安心・安全の強化ですね。コメントフィルタリングや、TikTokだと虚偽の情報が拡散されないようにするアップデートなど、やはりSNSを継続利用する上で、心理的安全性を守ることが必要不可欠です。各プラットフォーム、この三点が傾向としてあるように感じます。
ここからはさらに深堀りし、「これからのソーシャルメディアと企業が向き合うべきこと」をテーマに、僕らが具体的にどういうことをやっていけばいいのだろうかとお話できたらと思っています。
最近はクリエイター支援という高度なプラットフォーム化にとても力を入れているなと思っております。なぜ今このタイミングで注目されてきているのかという点について少しお聞きしていきたいのですが、どうでしょうか?
三島:そもそも、SNSのプラットフォームって人と人が繋がるものですよね。そこに企業が参入してきて、広告ビジネスやインフルエンサーのPRビジネスなどの手法をどんどん取り入れている。
その結果、結局「人にコンテンツが消費され、エンゲージメントがつき、活性化される」っていうところを、もう一度見直したんじゃないかなと思っています。
これだけこぞって3媒体がクリエイターを支援しますってなかなかないと思うんです。だからこそ、その傾向を僕はすごく感じますね。
松重:資産ファンドを立ち上げて、リール投稿するだけで、お金もらえるみたいな仕組みとかもできているほどですからね。結局ユーザー・消費者が面白いコンテンツを見たいとなったときに、企業の投稿よりも、個人のクリエイター発信のコンテンツが一番好まれるっていうのが、各媒体がこれまでやってきてわかったことなのかなと。
そう考えると、いかにしてみんなから支持されるクリエイターを自分たちのプラットフォームに集められるのかが、SNSの利用者を集める・定着させることにも繋がるんだと思います。
ふくま:そもそもこの流れって、昔からやりたかったけれど、やろうと思ってもできなかったのかなと思ってて。現代はアプリケーションがものすごく発達していて、今でもスマホがあれば誰でもコンテンツを作れるじゃないですか。
いろんな便利なアプリや音声の書き出し機能など、クリエイターが作りたいものをできるだけ負荷をかけずに作れるような環境が作られているのは、コンテンツ以外にも言えることだと思っています。
今は誰もが「作る人」になったからこそ、クリエイターを支援していくことによって、プラットフォームを進めていくみたいな風潮が生まれているのかなと思いました。
三島:昔も一部はあったと思うのですが、インフルエンサー・クリエイターがビジネスを始めるっていう機会がすごい増えたなと思っていて。
ヒカルさんは代表的な例でいろんなバズを起こしてる方ですし、株式会社ZOZOさんもYOUR BRAND PROJECTというセンスや才能のあるインフルエンサーを応援するためのプロジェクトを去年ぐらいから始めています。
引用:株式会社ZOZO YOUR BRAND PROJECT
株式会社ZOZOがプラットフォーム化して商品・店を作るのを応援します、という試みによって、誰でもコンテンツやブランドを作りやすくなりました。いわゆるP2Cモデルが多くなってきたからこそ、プラットフォーム側としてもそういうのを応援する傾向にあるんじゃないかなとすごく思いますね。
松重:インフルエンサーという言葉を使うと、キラキラして流行り物っぽい感じになってしまうけれども、そもそもインフルエンサーって「たくさんの人から支持される人」だと思う。それに、良いインフルエンサーさんとお仕事をご一緒すると、ものすごく仕事できるような人だなと感じます。
そういう人たちがただ企業の支援をやっていたのが、今までのギフティングのようなことかと思うんですよね。そういうインフルエンサーの方々が自分でブランドを起こし、自分たちの仕事をしようとしてるなら、そりゃあ成功するだろうなと思う部分はありますね。
ふくま:まさにPerson to C(P2C)ですね。こういうのを見ていると、本当に個人が強くなりましたよね。情報発信が企業からしかできなかった時代から、誰もが自由に発信できる流れがこの10年で増えてきたなと思います。
コンテンツ作成に関しても、良いアプリもあるし、iPhoneカメラの画質も良い。コンテンツ作成力がどんどん企業に追いついてきていて、本当に個人の力がすごく強くなってきているトレンドを感じます。
フォロワー数という「数」の価値は下がっていく?
ふくま:次は、Twitter・Instagram・TikTokの各プラットフォームをどのように使い分けていくべきか、という話に移ります。とても難しい話題だと思うんですがいかがでしょう?
三島:ブランドのフェーズと目的による、という回答に尽きるんですが、それだとちょっと冷たくなってしまうので……使われ方みたいな話をしようかなと思います。
Instagramは、やはり既存のCRM向けプラットフォームになってきているなと感じています。アルゴリズム的にも、新規ユーザーにコンテンツを届けるためには、既存のエンゲージメントやファンの親密度が重要。エンゲージメントを獲得したら「好き」と「欲しい」みたいなのをうまく突き詰めていくと広がっていきそうですよね。そう考えると、やはりCRMっぽいです。
一方で、TikTokはいきなり商品がレコメンドされて「いいな」と思って買っちゃう。認知から購買まで一気通貫でいく印象です。文化形成や興味喚起を短期で行うプラットフォームだなとすごく感じます。
引用:TikTok For Business TikTokユーザー白書第3弾
Twitterは、実はどっちも兼ね備えてると感じていて。UGCに対してアクティブサポートをしたりとか、既存のこのUGCに対してすごい手厚くサポートすると、その分エンゲージメントが上がる。
拡散力に関しては、TikTokほどではないかもしれないですが、Twitterでも十分情報が広まりますし、今後の使い分け次第かなと思っています。自分たちの持っているアセットやターゲットに合わせて使い分けるのが良いのだろうなと感じていますね。
松重:僕たちはBtoBのビジネスをやっている中で、Twitterをめちゃくちゃコアに使うよね。コアな関係性を外部の人たちと築きながらお仕事するケースもあるし、情報交換するケースもあったりして、BtoBにおいてはTwitterはコアな関係構築に使える印象があります。
Facebookもそういう意味では似たような役割を担ってくれるので、ビジネスによって変わってくるかなと。
一番大事なことは、そのプラットフォームにどんな人たちがいるのか、その人たちがどういう使い方をしているのかをしっかりと把握した上で、その社会において、我々はどういう付き合い方をするべきなんだっけと考えることなのだと思います。
ふくま:個人的には、それぞれの垣根が無くなっていくのではないかと思っています。結局、ユーザーのことを考えると機能も寄っていくし、良いコンテンツを届けるためのアルゴリズムになっているし。
また、今後はフォロワーの価値がどんどん薄くなっていくんじゃないかという気がしているんです。たとえば、TikTokはそれを一番体現してるなと思うんですよね。0フォロワーでも、1投稿目からめちゃめちゃバズるっていうのがあるわけじゃないですか。
よりコンテンツファーストになっていくので、フォロワーの価値が下がってくるのかなと思ったりします。TikTokやInstagramもそうだし、Twitterもリツイートしなくていいねをするだけ広がっていくっていうのがあったりするので。
松重:フォロワーの価値が下がるって、フォローをするっていうアクション自体の意味が変わるっていうことなのかもしれないですね。今の世の中では、フォローすると、「この人にフォローされました」っていう通知がいくから結構メンタルブロックがある。
多くの人にとって「フォローしたことは気づかれたくないんだけど見たい」という心理があるんじゃないかなって思うんです。TikTokにはお気に入りっていう機能があって、これはフィードで自分のお気に入りに入れているものだけを見られる機能なんです。フォローを通知させずにお気に入りをするために実装されているんですよね。
三島:Twitterのリストみたいな機能ですね。
松重:そうそう。でもリストは通知が出てしまうんだよね。やっぱり「この人に対してアクションしている」という意思表示をしたくない傾向があるのかなと。
ふくま:面白いですね! たしかに、自分のプロフィールのためにフォローしているというか、フォローの役割が「この人たちは友達です」「このブランドを応援しています」「このブランドが好きです」っていう意思表示になっているんですね。
企業と個人が「共創」できる環境が求められている
ふくま:少し話題を変えて、インフルエンサーマーケティングの変遷や、クリエイターとの付き合い方についてもお話できたらと思います。三島さん、どうでしょうか?
三島:よく僕らが「餅屋」というプロジェクトで伝えていることではあるのですが、個人のクリエイターが強くなっている中で、企業との共創が必要なんじゃないかなと思っていて。クリエイターが増えて、情報も増えていく中では、企業とクリエイターがタッグを組んで世の中を変えるためにコンテンツを作っていくことが大切です。
今まではブランドがPRのためにクリエイターに告知をお願いする流れが一般的でしたが、今後はクリエイターも交えてコンテンツを一緒に作っていく必要性があるなと。ブランドにも、クリエイターを応援していく姿勢が求められているのだと思います。
松重:「インフルエンサーマーケティングって本当に必要なんだっけ?」と考えたことがあったよね。バラマキ型のギフティングって本当に価値があるんだっけ、と。
結局、クリエイターはSNS上で人気があるのだから、お仕事の仕方自体をディレクションできる役割があればちゃんと一緒に共創できるものだよなという考え方に落ち着きました。僕たちの場合、あまりインフルエンサーという言葉も大々的には言っていないですしね。
ふくま:最近はもうインフルエンサーというワードがもう一般化してきたから使う人も多いけど、インフルエンサーってその中にコンテンツがあって、それを影響力として持っている。だから、クリエイターという表現のほうが正しいなとは思ったりします。
SNSのコマース化と企業のSNS活用に対する変化
松重:僕が今やっている「サキダチラボ」というプロジェクトがあるんですが、そこではSNSが企業の実利貢献に繋がっているのかを可視化しようとしています。
初期の頃はエンゲージメントと売上の関係を洗いながら分析していたのですが、なかなか相関が見えにくくて。最近は、消費者がものを購入するときの流れにどうSNSが関与しているのかを分析することが企業のSNS活用を紐解くヒントになると踏んでいます。
いずれSNSのみで発見から購入まで完結する時代はくると思いますが、現段階ではそこまできれいな流れを生み出しているケースはそう多くありません。段階ごとにモチベートして、次のアクションに促すような役割をSNSが担っているのかなと思いますね。
カスタマージャーニーの流れに「公式アカウントを確認する」を入れていますが、これも最初の頃は「フォローする」だと考えていました。ところが、購買体験において、公式アカウントのフォローってマストじゃないんですよね。
ただ、Instagramで新しいブランドを発見したときに、アカウント名で検索してプロフィールページにアクセスしてどんなブランドなのか確認する流れは往々にしてある。要するに、プロフィールページへのアクセスは起きやすいけど、フォローまでは難しいのかなと。
もちろん、そのブランドをどんどん好きになればフォローにつながるとも思います。まとめると、企業にとってのSNSはフォローしてもらうことがビジネスにおけるマスト条件ではないのだろうなと考えています。
ふくま:よく言われる話ですが、SNSを部分的に当てはめるのではなく、ビジネス全体を見て最適な活用方法を考えることが大切ですよね。カスタマージャーニー上の「公式アカウントを確認する」っていうアクションが生まれる気づきもとても重要なものですよね。
2022年、どういったコンテンツトレンドが来るのか?
三島:これまでの話を通して、各プラットフォームに実装されている機能が企業ではなくユーザーに向けたものという例が多いと思っています。企業発のコンテンツも「そこに人がいるかどうか」が重要視されていますしね。
僕の知るクリエイターでもリールを毎日投稿している人がいるんですが、1年間でフォロワーが10万人増えているそうで。コンテンツそのものもそうですが、それ以上に主役がユーザー自身に切り替わっているのだと思うんです。今後もその流れは変わらず、コミュニティ強化・活性のための機能開発などが行われるのだろうなと考えています。
ふくま:P丸様。の「シル・ヴ・プレジデント」も、その歌をみんなが使ってすごく流行りましたよね。「大統領になったらね♪」っていうやつ。そこに企業が一緒に溶け合っていくみたいなのが一番大事な気がするんですよ。
変わりゆくコンテンツ、今、企業に求められるものとは?
松重:SNSマーケティング活動を行う上で、どうしても自分たちのアカウントのグロースばかりに目線がいきがちだなと思っています。どうすればフォロワーが増えるか、エンゲージメントが伸びるか、とか。もちろん、それらはあるに越したことはありません。
けれど、そもそも最初の情報接点がユーザーの口コミっていうケースも増えているので、SNSとユーザーとの接点を整理してやるべきことを考え直す必要もあるのだと思うんです。
三島:フォロワーの価値が無くなってきた点は意識しなければと思います。ちょっと言葉選びが悪いですが、運営者側はずっとフォロワーを追わされてきた側面があって。やっぱり数ってわかりやすい指標だったので。今後は公式アカウントで追う指標がフォロワーになっていたところをいよいよ変えていかなきゃいけないなと思っています。
UGCの数もそうですし、質もそう。一つひとつのコンテンツへの反応だったりを総合的に見て、全体最適でコンテンツを作っていくことが間違いなく求められていきますよね。
ふくま:たしかにそうですね。こういった会話は、昔Facebook活用の話題でも上っているので歴史が繰り返されている感がありますね。では最後に、まとめに入りましょうか。
三島:僕、「#ドミノチーズ100万」っていう企画がすごく面白かったなと思っていて。まさに企業とユーザーとインフルエンサーみんなでカルチャーを作る共創でした。無理やりな感じもないし、ピザのチーズを伸ばす醍醐味ってみんなやるじゃないですか。
それをインフルエンサーも楽しそうにやっていたし、企業はそういう環境をタグラインだけ用意したんですよね。こういうコンテンツって見ていて楽しいし、やっていても楽しいですよね。
ふくま:ムーブメントを作っていく過程って、お祭り感ありますよね。やりたいことをTwitterの「バルス」みたいに作っていく感じというか。
一同:そうそうそうそう。
三島:良い意味でPR感が全くなかったですね。
ふくま:アルゴリズムの評価軸としては、全部のプラットフォームにおいてまずインナーとフォロワーにコンテンツが公開されて、それが良いと評価をされると外に出ていく流れです。
つまり、フォロワーに意味がないというより、良質なフォロワーを獲得して良質な関係を築いていることが大切ですよね。それ次第で、外にも広がるかどうかが変わってきてしまうので。
三島:企業の押しつけっぽいPRとかコミュニケーションはすでに無理がありますよね。本当にお客さんやフォロワーの声に耳を傾けなきゃいけなくなったし、ハックしようとしてもそれが通用しなくなったなと思っています。
どれだけフラットかつボーダーレスにお客さんと向き合っていくのかが、これからの時代も求められているなと思いますし、機能やアップデートも含めて、それらを重要視した流れになっていくんだろうなと感じています。
松重:利用者の使い方も機能も変わってきているので、そもそもどう活用するかを考える前に、「利用者はどのように使っているのか?」「どんな機能がなんの目的で実装されているのか?」をちゃんと理解した上で活用していくのが重要。そうすることで、もうちょっと本質的な活用方法が見出せるのではないかと思います。
ふくま:お二人共、本日はありがとうございました!